いつか王子様が・・・
2008-04-02
「す・・すきです。僕とつきあってください」
真っ赤な顔をしてたどたどしく告白してくる彼に私は内心噴出しそうになった。
おまけに一輪の赤い薔薇を差し出してお願いしますという演出付だった。
上から下まで念入りにチェック。
背は175cmくらい、結構手足は長い、少し童顔で私のタイプではない、
髪型は普通すぎておもしろくない、全体的に努力賞というところか。
私は男性には効果抜群だと思っているお得意の天使のような微笑を彼に向け、
静かに、ごめんなさいと告げた。
彼の顔は次第に青ざめていった。
そしてあわてたように彼は私の前から走り去っていった。
「ああ、かわいそうに。泣きそうだったね、彼。あれでもだめなんだ?結構いけてるよ、彼。
ハルカは罪な女だね」
友達のマアがおもしろそうに声をかけてくる。
「罪?何にも悪いことしてないと思うけどな。思わせぶりなこともしてないつもりだし」
「ははは・・そうだよね。ハルカのせいじゃない。でもさ、どんな奴ならいいのよ?」
「・・・おとぎ話に出てくる王子様みたいな人」
「ルックスよくてお金もちで性格も優しくてそれで勇敢でハルカを守ってくれるようなひと?」
私は元気よく首を縦にふった。
マアは笑ったけれど私は本当にそのようなことを夢みている。
いつか、白馬に乗った王子様が私を迎えに来てくれるはずだ。
★★
快晴の土曜日、待ち合わせにはまだ早いようだ。
私は駅前の広場のベンチに座りぼんやりとマアを待っていた。
音のする方向へ目を向けると路上ライブをしている人がいた。
結構な人だかりで黄色い声援も聞こえてきた。
興味を覚えた私はその輪に入ってみることにした。
ギターの彼と目が合った。
ナニコノヒト!!!
彼のルックスはまるで少女漫画に出てくるような王子様だった。
自分の心臓の音がやけにうるさく奏でていることに気づいた。
「ハルカ!お待たせ。あいかわらずカッコイイね、このバンド。もうすぐデビューするかもね」
後ろから声をかけられた。
マアがライブを見ながらニコニコとしていた。
「・・知ってるバンド?」
「うん。私の友達の彼氏があのボーカルの子」
「・・じゃあ、あのギターの人は?」
「ギター?・・ええと、カイトだったかな」
「カ イ ト く ん」私はその名前を何度も繰り返し呼んでいた。
「なになになに?ハルカ、カイトに惚れた?」
「・・・かもしれない・・・」
その日から私の心はカイトで一杯になった。
カイトたちが出没する場所はどこまでも追いかけていた。
まるでストーカー。
自分でもどこにこんな情熱が隠されていたのかと思うほどだった。
「カイトはやばいよ。女の子、とっかえひっかえっていう噂だよ。
誰のことも好きにならないんだって」
マアが心配そうに私に言ってくれたがどんな忠告ももう耳に入らない。
★★
ある日、私はマアのその友達とやらのいきなはからいでカイトに会うことができた。
二人きりでとても緊張したけれど彼は穏やかで話しやすい人だった。
「ハルカちゃん、そこ入らない?今晩一緒にすごそ」
私に断る理由などなかった。
ビジネスホテルの一室は清潔で落ち着いた内装だった。
備え付けの冷蔵庫からビールを取り出し乾杯した。
彼が熱く音楽への夢を語りだす。
私も彼の世界へと入っていくことができたらといいと思った。
綺麗なのは顔だけでなく心の中身もたいそう魅力的な人だということを知った。
いつの間にか彼の腕の中にいた。
酔っていたのかあるいはそうではなかったのかもしれないけれど。
その瞳にとらわれ、彼の吐息に心奪われ、もう逃げられないと思った瞬間、
私は彼に堕ちていた。
★★
翌朝起きた時、カイトはいなかった。
手紙もメモもなかった。
携帯の番号もアドレスも聞いていなかった。
フロントに聞くと支払いは済んでいるという。
身体に残された痛みのようなこのけだるさだけが彼を感じさせてくれた。
私だけのカイトはそれっきり幻のように消えてしまった。
★★
数年後、テレビの中のカイトがギターを片手にインタビューに答えていた。
『理想の女性はいつか現れるんじゃないかな』
カイトも昔の私と同じなのだろうか。
理想ばかりを追い求めて少しでも条件に合わないと切り捨てていたあのころ。
彼らのよいところなど少しもみようともしなかった。
何度もアプローチを受けることで自惚れてどんどん嫌な女になっていた。
→
王子様はいたるところにちゃんと存在するのです。
気づかないだけです。
その人のルックスばかりを見るのではなく、素敵なところを探していくのです。
自分自身も感性豊かな人になっていく努力を重ねることが
魅力的な女性になるための近道ではないかと思います。
あなたの王子様がみつかるはずですよ。
真っ赤な顔をしてたどたどしく告白してくる彼に私は内心噴出しそうになった。
おまけに一輪の赤い薔薇を差し出してお願いしますという演出付だった。
上から下まで念入りにチェック。
背は175cmくらい、結構手足は長い、少し童顔で私のタイプではない、
髪型は普通すぎておもしろくない、全体的に努力賞というところか。
私は男性には効果抜群だと思っているお得意の天使のような微笑を彼に向け、
静かに、ごめんなさいと告げた。
彼の顔は次第に青ざめていった。
そしてあわてたように彼は私の前から走り去っていった。
「ああ、かわいそうに。泣きそうだったね、彼。あれでもだめなんだ?結構いけてるよ、彼。
ハルカは罪な女だね」
友達のマアがおもしろそうに声をかけてくる。
「罪?何にも悪いことしてないと思うけどな。思わせぶりなこともしてないつもりだし」
「ははは・・そうだよね。ハルカのせいじゃない。でもさ、どんな奴ならいいのよ?」
「・・・おとぎ話に出てくる王子様みたいな人」
「ルックスよくてお金もちで性格も優しくてそれで勇敢でハルカを守ってくれるようなひと?」
私は元気よく首を縦にふった。
マアは笑ったけれど私は本当にそのようなことを夢みている。
いつか、白馬に乗った王子様が私を迎えに来てくれるはずだ。
★★
快晴の土曜日、待ち合わせにはまだ早いようだ。
私は駅前の広場のベンチに座りぼんやりとマアを待っていた。
音のする方向へ目を向けると路上ライブをしている人がいた。
結構な人だかりで黄色い声援も聞こえてきた。
興味を覚えた私はその輪に入ってみることにした。
ギターの彼と目が合った。
ナニコノヒト!!!
彼のルックスはまるで少女漫画に出てくるような王子様だった。
自分の心臓の音がやけにうるさく奏でていることに気づいた。
「ハルカ!お待たせ。あいかわらずカッコイイね、このバンド。もうすぐデビューするかもね」
後ろから声をかけられた。
マアがライブを見ながらニコニコとしていた。
「・・知ってるバンド?」
「うん。私の友達の彼氏があのボーカルの子」
「・・じゃあ、あのギターの人は?」
「ギター?・・ええと、カイトだったかな」
「カ イ ト く ん」私はその名前を何度も繰り返し呼んでいた。
「なになになに?ハルカ、カイトに惚れた?」
「・・・かもしれない・・・」
その日から私の心はカイトで一杯になった。
カイトたちが出没する場所はどこまでも追いかけていた。
まるでストーカー。
自分でもどこにこんな情熱が隠されていたのかと思うほどだった。
「カイトはやばいよ。女の子、とっかえひっかえっていう噂だよ。
誰のことも好きにならないんだって」
マアが心配そうに私に言ってくれたがどんな忠告ももう耳に入らない。
★★
ある日、私はマアのその友達とやらのいきなはからいでカイトに会うことができた。
二人きりでとても緊張したけれど彼は穏やかで話しやすい人だった。
「ハルカちゃん、そこ入らない?今晩一緒にすごそ」
私に断る理由などなかった。
ビジネスホテルの一室は清潔で落ち着いた内装だった。
備え付けの冷蔵庫からビールを取り出し乾杯した。
彼が熱く音楽への夢を語りだす。
私も彼の世界へと入っていくことができたらといいと思った。
綺麗なのは顔だけでなく心の中身もたいそう魅力的な人だということを知った。
いつの間にか彼の腕の中にいた。
酔っていたのかあるいはそうではなかったのかもしれないけれど。
その瞳にとらわれ、彼の吐息に心奪われ、もう逃げられないと思った瞬間、
私は彼に堕ちていた。
★★
翌朝起きた時、カイトはいなかった。
手紙もメモもなかった。
携帯の番号もアドレスも聞いていなかった。
フロントに聞くと支払いは済んでいるという。
身体に残された痛みのようなこのけだるさだけが彼を感じさせてくれた。
私だけのカイトはそれっきり幻のように消えてしまった。
★★
数年後、テレビの中のカイトがギターを片手にインタビューに答えていた。
『理想の女性はいつか現れるんじゃないかな』
カイトも昔の私と同じなのだろうか。
理想ばかりを追い求めて少しでも条件に合わないと切り捨てていたあのころ。
彼らのよいところなど少しもみようともしなかった。
何度もアプローチを受けることで自惚れてどんどん嫌な女になっていた。
→
王子様はいたるところにちゃんと存在するのです。
気づかないだけです。
その人のルックスばかりを見るのではなく、素敵なところを探していくのです。
自分自身も感性豊かな人になっていく努力を重ねることが
魅力的な女性になるための近道ではないかと思います。
あなたの王子様がみつかるはずですよ。
二番目の女
2008-04-01
【土日は会える?】
私は金曜日の朝、いつものように定期便を彼に送った。
彼からの私への返事はいつでもゆ・と・り。
私はイライラし始めた自分の情けなさにため息をついた。
仕事もミス連発、男のことばかり考えている自分はなんておろかな存在なのだろう。
自分で決めたことではないか。
自分で選んだ道だった。
彼が誰をみててもいい。
彼のそばにいたい、彼と一緒にすごしたい。
ただそれだけでよかったはずではないか。
なんとか仕事を終えた頃、ようやくマナーモードの携帯が震えた。
【無理 彼女と会うから】
たったの一行、本当に彼らしい。
私は笑うことも泣く事もできずにいた。
すっかり冷めてしまったコーヒーを一口飲んだ。
アルコールなら私をなぐさめてくれるだろうか。
いっそのことこのカップの中に携帯をいれて壊してしまおうか。
彼女と私の違いは何だろう。
同じ女として産まれて
同じ男を愛した。
彼女は彼に大切にされて愛されている存在。
私は嫌がる彼にお願いをして無理やりにつきあってもらっている存在。
私の立場として悲しんだり悲観的になったりすることは許されないのだ。
彼に面倒な女だと思われてはいけない。
彼を困らせてはいけない。
私は深呼吸し震える指でメールを打った。
【じゃあ、今から会える?8時ごろには私家に帰ってると思う】
今度はすぐに【いいよ】と返事がきた。
彼の都合のよい時間に私の部屋で過ごす。
いつものことではないか。
私には特別な時間もロマンチックな場所も用意されてはいない。
★★
汗ばむ彼の胸元に顔を押し付けて、彼がくれる情熱を全て受け止めた。
「・・・好き・・大好きなの」
私は彼の名を叫び続ける。
私の名前を囁いてほしいと何度も彼に願うと彼はそうしてくれるのだ。
それは偽りの愛でも私にはその瞬間だけは本物に思えた。
私を抱き寄せたその手が優しくて温かくて泣きそうになった。
浴室から出てきた彼はすでにスーツを身にまとっていた。
私は落胆した。
ガウンをはおり、ベッドに腰掛けたまま、足をぶらぶらさせながら、
嫌味な口調で彼に声をかけた。
「もう帰るの?」
「ああ」
「明日は朝早くからデートなんだ?」
彼はそれには答えず、わずかに眉根を寄せ、困惑したように私を見た。
しばらく沈黙が続きやがて彼は微笑した。
彼は私の手を取りそっと立ち上がらせ、静かに私を抱きしめた。
私の耳元に彼の唇が寄せられた。
「・・もう、俺じゃない男のところに行きな。これ以上俺はお前に何もしてやれない」
彼の言葉は さよなら と続いた。
その声はとても優しいものだった。
いつか彼を忘れることができるのだろうか。
こんなにも彼を大好きなのに。
→
ものわかりのよい都合のいい女に徹すること。
決して文句は言わず、縛り付けるようなことは言わないこと。
彼女と自分を比べて彼の前で悲劇のヒロイン気取りをしないこと。
<私だけを見て、私のこと大切にして>などとは決して言わないこと。
一緒にいることができるだけで幸せだと思うこと。
これでも二番目でいいですか。
それとも
あなただけを見てくれる人を探しにいきますか。
私は金曜日の朝、いつものように定期便を彼に送った。
彼からの私への返事はいつでもゆ・と・り。
私はイライラし始めた自分の情けなさにため息をついた。
仕事もミス連発、男のことばかり考えている自分はなんておろかな存在なのだろう。
自分で決めたことではないか。
自分で選んだ道だった。
彼が誰をみててもいい。
彼のそばにいたい、彼と一緒にすごしたい。
ただそれだけでよかったはずではないか。
なんとか仕事を終えた頃、ようやくマナーモードの携帯が震えた。
【無理 彼女と会うから】
たったの一行、本当に彼らしい。
私は笑うことも泣く事もできずにいた。
すっかり冷めてしまったコーヒーを一口飲んだ。
アルコールなら私をなぐさめてくれるだろうか。
いっそのことこのカップの中に携帯をいれて壊してしまおうか。
彼女と私の違いは何だろう。
同じ女として産まれて
同じ男を愛した。
彼女は彼に大切にされて愛されている存在。
私は嫌がる彼にお願いをして無理やりにつきあってもらっている存在。
私の立場として悲しんだり悲観的になったりすることは許されないのだ。
彼に面倒な女だと思われてはいけない。
彼を困らせてはいけない。
私は深呼吸し震える指でメールを打った。
【じゃあ、今から会える?8時ごろには私家に帰ってると思う】
今度はすぐに【いいよ】と返事がきた。
彼の都合のよい時間に私の部屋で過ごす。
いつものことではないか。
私には特別な時間もロマンチックな場所も用意されてはいない。
★★
汗ばむ彼の胸元に顔を押し付けて、彼がくれる情熱を全て受け止めた。
「・・・好き・・大好きなの」
私は彼の名を叫び続ける。
私の名前を囁いてほしいと何度も彼に願うと彼はそうしてくれるのだ。
それは偽りの愛でも私にはその瞬間だけは本物に思えた。
私を抱き寄せたその手が優しくて温かくて泣きそうになった。
浴室から出てきた彼はすでにスーツを身にまとっていた。
私は落胆した。
ガウンをはおり、ベッドに腰掛けたまま、足をぶらぶらさせながら、
嫌味な口調で彼に声をかけた。
「もう帰るの?」
「ああ」
「明日は朝早くからデートなんだ?」
彼はそれには答えず、わずかに眉根を寄せ、困惑したように私を見た。
しばらく沈黙が続きやがて彼は微笑した。
彼は私の手を取りそっと立ち上がらせ、静かに私を抱きしめた。
私の耳元に彼の唇が寄せられた。
「・・もう、俺じゃない男のところに行きな。これ以上俺はお前に何もしてやれない」
彼の言葉は さよなら と続いた。
その声はとても優しいものだった。
いつか彼を忘れることができるのだろうか。
こんなにも彼を大好きなのに。
→
ものわかりのよい都合のいい女に徹すること。
決して文句は言わず、縛り付けるようなことは言わないこと。
彼女と自分を比べて彼の前で悲劇のヒロイン気取りをしないこと。
<私だけを見て、私のこと大切にして>などとは決して言わないこと。
一緒にいることができるだけで幸せだと思うこと。
これでも二番目でいいですか。
それとも
あなただけを見てくれる人を探しにいきますか。



